「農業振興地域(のうぎょうしんこうちいき)」とは、農地を守り、農業を効率的かつ持続的に発展させることを目的として指定された地域です。
日本では、農地の保全や農業の振興を推進するために、「農業振興地域の整備に関する法律(農振法)」に基づいて市町村が指定しています。
略して農振(のうしん)と言われます。
農業振興地域の目的
農業振興地域は、次の目的で設けられています。
農地の保護
農地の無秩序な転用を防ぎ、農業の基盤を守る。
効率的な農業経営の支援
集中的な農地利用やインフラ整備により、効率的な農業経営を実現。
持続可能な農業の促進
農業資源を守りながら、長期的な農業の発展を目指す。
地域の活性化
農業を軸に地域経済やコミュニティを強化する。
農業振興地域の仕組み
農業振興地域は、以下の2つの区域に分かれています。
農用地区域(農振農用地)
農業振興地域の中で、特に重要な農地として指定される区域。
主な特徴
- 原則として農地以外の用途に転用できません。
- 集約的な農業振興が行われます。
非農用地区域
農業振興地域内にありながら、農業に適さない区域です。
他の用途(住宅地、工業地など)への転用が比較的容易です。
農業振興地域の指定手続き
地域の調査
市町村が農地の利用状況や農業の発展可能性を調査します。
基本方針の策定
農業振興地域整備計画として、農地保護の方針を定めます。
区域の指定
農用地区域と非農用地区域を分け、用途に応じた計画を作成します。
国や県の承認
市町村が策定した計画を、国や県が承認して正式に区域が決定されます。
農業振興地域での建築・土地利用
農用地区域での制限
原則として農業以外の用途は不可
農地を住宅地や商業地に転用することは基本的に認められません。
例外的な許可
農業用施設や公共性の高い施設(学校、病院など)の建設は可能ですが、いずれにしてもそれなりの手続きを踏む必要があります。
非農用地区域での活用
比較的自由に住宅や施設を建設可能です。
ただ、すべてが自由というわけにはいかず、自治体ごとの規制に従う必要があります。
農業振興地域のメリット
農業に適した環境が整備される
道路や用水路、排水設備などのインフラが整備され、効率的な農業が可能です。
農業者の経営安定
農地が保護されるため、長期的な農業経営が計画しやすいと言えます。
地域全体の活性化
農業を中心とした地域経済の発展が促進されます。
農業振興地域のデメリット
農地転用の制約
農用地区域では、農業以外の用途への転用が厳しく制限されます。
土地価格の上昇が見込みにくい
農地としての用途が限定されるため、不動産としての資産価値はかなり低いです。
利便性の制限
都市部から離れた地域が多いため、大半の個所で交通やインフラの利便性が良いとは言えないでしょう。
農業振興地域に関する豆知識
転用許可が必要
農用地区域内で農地を転用する場合、農業委員会や都道府県の許可が必要。
農振除外手続き
農用地区域を非農用地区域に変更するには、農振除外の手続きが必要です。さらにその手続きには時間がかかり、農振除外のハードルはかなり高いです。
遊休農地対策
農地が放置されると、遊休農地として是正措置が求められる場合があります。
農業経営基盤強化法との関連
農地中間管理機構を通じて農地の集積を進める政策と連動。
地域ごとに特性が異なる
農業振興地域の計画内容は自治体によって異なるため、地域の実情に合わせた利用が必要になるでしょう。
農業振興地域が適している人
- 農業を主業とする人
農業経営に取り組む方には、保護された環境が最適。 - 地域資源を活用した事業を目指す人
農業と観光を組み合わせた事業を展開したい方。 - 農地の保護に関心がある人
環境保全や地域農業の維持に協力したい方。
「農業振興地域」に関するまとめ
農業振興地域は、農地を守りながら地域農業を振興するための重要な制度です。
農地転用や土地利用には制限があるものの、農業経営に特化した環境は整っています。
土地利用や建築計画を検討する際には、区域の特性や規制内容を十分に理解して、自治体や専門家に相談することが必要となるでしょう。
農業振興地域を活用し、持続可能な地域づくりや農業経営を進めましょう。