「債権譲渡」とは、債権者(お金を受け取る権利を持つ人)がその権利を第三者に譲り渡すことを指します。
債務者(お金を支払う義務を持つ人)との関係はそのままに、債権者が変わるだけです。
金融取引や企業間の取引、ファクタリングなどでよく利用される仕組みです。
債権譲渡の仕組み
債権者(譲渡人)
元々の債権者。譲渡によって債権を第三者に引き渡します。
譲受人
債権を譲り受けた第三者。以後、この譲受人が新たな債権者となります。
実例
民間ではサービサーと呼ばれる債権の管理や回収を行う民間の専門業者や、弁護士に委託されることが多いです。
債務者
債権の対象となる支払い義務を負う人。譲渡後も支払い義務は変わりません。
債権譲渡の具体例
企業間の取引
会社Aが会社Bに対して売掛金100万円の債権を持っている場合、会社Aがその債権を会社Cに譲渡。
会社Cが新たな債権者となり、会社Bは会社Cに支払います。
ファクタリング
中小企業が、取引先からの売掛金を受け取る前に、その債権をファクタリング会社に譲渡。
ファクタリング会社が売掛金を早期に買い取り、現金化します。
ローンの回収業務
銀行が顧客のローン債権を回収会社に譲渡し、回収業務を代行させる。
債権譲渡の手続き
契約書の作成
債権譲渡契約書を作成し、譲渡の条件や範囲を明確にします。
通知・承諾
債務者に対して債権譲渡を通知するか、債務者の承諾を得る必要があります。
通知は内容証明郵便などで行うことが一般的。
登記の利用
債権譲渡が確実であることを証明するため、債権譲渡登記を行う場合もあります(特に第三者が関与する場合)。
債権譲渡のメリット
債権者(譲渡人)のメリット
資金繰りの改善
債権を譲渡して現金化できるため、早期に資金を確保可能。
リスク分散
債権回収リスクを第三者に移転できます。
負担軽減
債権の管理や回収業務を譲受人に委ねることで負担が軽くなる。
債務者のメリット
関係が維持される
債務者としての義務は変わらないため、支払い条件に変更はない、分割であれば支払の負担が少し軽減する場合もあります。
債権譲渡のデメリット
債権者(譲渡人)のデメリット
譲渡価格が減少
債権を額面通りの価格で譲渡できるとは限らず、割引される場合が多いです。
信用問題の発生
債権を譲渡したことで、取引先との信頼関係が損なわれる可能性があります。
債務者のデメリット
支払先の変更
債権譲渡後は新たな債権者に支払う必要があり、手続きが煩雑になる場合があります。
債権譲渡の注意点
契約書の明確化
債権の種類や範囲、譲渡条件を明確に記載するようにしましょう。
通知・承諾の重要性
債務者に通知しない場合、債務者が元の債権者に誤って支払いをしてしまうリスクがあります。
譲受人の信用確認
債権を譲渡する際、譲受人の信用や能力を確認しておくことが重要でしょう。
譲渡の対象外となる債権
一部の債権(扶養義務や損害賠償請求権など)は譲渡できない場合があります。
債権譲渡に関する法律
民法改正(2020年施行)
債権譲渡に関する手続きが整理され、通知や承諾の要件が明確化されました。
債権譲渡登記制度
法務局に譲渡の登記を行うことで、第三者対抗要件を満たすことができます。
債務者保護規定
債権譲渡により債務者に不利益が生じないよう配慮されています。
債権譲渡に関する豆知識
ファクタリングと債権譲渡の違い
ファクタリングは売掛債権を現金化するサービスで、債権譲渡を利用して行われます。
譲渡禁止特約
一部の契約では、譲渡禁止条項が含まれている場合があります。
ただ、2020年の民法改正で、譲渡禁止特約があっても第三者が善意で受け取った場合には譲渡が有効とされる場合があります。
一部譲渡の可能性
債権の一部のみを譲渡することも可能ですが、一方で契約内容に注意が必要です。
「債権譲渡」に関するまとめ
債権譲渡は、債権者が第三者に債権を譲渡することで、資金繰りの改善や債権回収リスクの分散を図る仕組みです。
ただし、譲渡手続きの適切な実施や、債務者への通知・承諾を怠るとトラブルが発生する可能性があります。
取引先との信頼関係や契約内容を考慮しつつ、法的手続きに従って安全に債権譲渡を進めることが重要です。
弁護士や専門家のアドバイスを活用しながら、最適な選択を目指しましょう。