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耐力壁(たいりょくへき)

耐力壁

「耐力壁(たいりょくへき、たいりょくかべ)」とは、建物に加わる地震や風などの横方向の力に耐えるために設けられた壁のことを言います。
建物の構造上、垂直方向の荷重(重さ)だけでなく、水平力にも耐えられるようにする重要な役割を担います。
主に木造住宅や鉄骨構造、鉄筋コンクリート構造の建物に設置されます。

なお、ここではダンパーについては割愛しています。

耐力壁の役割

水平力に対抗する

地震や台風などの横方向の力から建物を守る役割を担います。

建物のねじれを防止

建物がねじれる力(偏心力)に対しても抵抗し、全体の安定性を保ちます。

建物の剛性を確保

建物全体の剛性を高め、構造の強度を増します。
そのようなことから家の外周は、多くの耐力壁で囲まれていると言えます。

耐力壁の種類

木造住宅の耐力壁

筋交い(すじかい)

筋交い

壁内部に斜めに入れられる木材や金属の補強材のこと。
シンプルな構造で効果が高いです。
「筋交」「筋違」とも表記され、ブレスとも呼ばれます

構造用合板

ベニヤ板などの合板を使用して壁全体を補強します。工期が短く、比較的施工が簡単です。

金物補強壁

耐震金物

特殊な金物を使って接合部を強化します。
耐震金物とも言われたりします。金物なので耐久性が高いです。

モルタル壁

壁全体にモルタルを塗布して補強します。
モルタルなので耐火性も兼ね備えていて、耐用年数も長いです。

鉄筋コンクリート構造の耐力壁

コンクリート壁

鉄筋を組み込んだコンクリート壁で、とても高い強度を持っており、鉄筋コンクリート造(RC造)の建物では、そもそもが「耐震壁」となっています。

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剪断壁(せんだんへき)

水平方向の力(剪断力)に対抗する専用の壁のことを言います。
耐力壁の剪断剛性を大きくするには、壁厚を厚くします。

耐力壁の配置の重要性

バランスの取れた配置

耐力壁が建物の四隅や中心にバランスよく配置されていると地震や風の揺れに強い建物になりますが、耐力壁が一方に偏っていると、建物がねじれやすくなり、かえって倒壊のリスクが高まります。

開口部の考慮

その建物の中で、大きな窓や扉のある部分には耐力壁を設置しにくいため、別の方法で補強する必要があります。

耐力壁の配置のルール(木造住宅の場合)

最低必要壁量

建築基準法で、2階以上や延べ床面積が50㎡以上の木造住宅においては、建物の面積や構造に応じて必要な耐力壁の量が定められています。
最低必要壁量を求めるには、地震力に対する必要壁量と風圧力に対する必要壁量を計算し、存在壁量を上回るようにしなければいけません。
そのどちらか多い方の壁量が採用されます。

地震力の分散

耐力壁を建物全体に均等に配置することで、地震力が一箇所に集中しないように設計する必要があります。

注意

近年は、少子化の影響もあり、昔のようにたくさんの部屋がある家は無くなりつつあります。
自宅を間取り変更して大きなリビングを作るようにリフォームする!といった場合でも、そのリフォームの仕方には注意が必要になってきます。

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隅角部(ぐうかくぶ)の補強

建物の角に耐力壁を配置すると、構造の安定性が向上します。
もっと分かりやすく解説すると、壁面が折れ曲がっている部分を補強することです。
隅角部には、外に折れている出隅(ですみ)や、内に折れている入り隅(いりすみ)などがあります。

耐力壁のメリット

建物の安全性向上

耐力壁は地震や風などの水平力に耐えることで、建物の倒壊を防ぎます。

揺れを抑える

壁が揺れを吸収するため、住んでいる人の安全を守ります。

長寿命化

建物全体の構造が強化されることで、長期間の使用が可能になります。

耐力壁のデメリット

デザインの制約

少なからず窓や扉の配置に影響を与えるため、自由なデザインが難しくなる場合があります。

コスト増加

強度をあげようと思えば、さらに強度の高い材料や施工技術が必要なため、建築コストが上がる要因となります。

誤った配置のリスク

配置が不適切だと、かえって建物の安全性が低下することがあります。

耐力壁に関する豆知識

建築基準法の規定

前述したように木造住宅では、耐力壁の配置や壁量が建築基準法で細かく定められています。
建築基準法第20条で耐力壁の設置が義務付けられており、建築基準法施行令第46条第4項で耐力壁の必要壁量計算方法が定められています。

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リフォーム時の注意点

耐力壁を撤去するリフォームは建物の強度を低下させます
このあたりは素人には分からないと思いますので、必ず信頼の出来るプロに相談するようにしてください。

例えばどういったリフォーム?

3部屋の続間の壁をとって大きなリビングを作る。
もうそれだけでも構造上、怪しいリフォームです。
築40年近くたっている家であれば、なおさら強度が低下する恐れがあるので、きちんと信頼の出来るプロに見てもらうようにしましょう。

壁の種類による効果の違い

筋交いと構造用合板では、揺れに対する効果やコストが異なり、また、耐力壁の配置には、偏心率や剛性率などの基準が設けられています。

耐震診断の重要性

古い建物(特に昭和58年より前の建物)では、耐力壁が不足している場合が多いため、特に大きな地震が危惧されるエリアにお住まいであれば耐震診断を受けることをおすすめします。

壁の配置と家具の安全性

耐力壁が適切に配置されていると、家具の転倒リスクも低下します。

耐力壁の見直しや確認が適している人

  • 地震が多い地域に住んでいる人
    地震に強い建物を建てたい方。
  • 住宅の耐震性を重視する人
    安心して住める家を求める方。
  • リフォームや増築を検討している人
    耐力壁を考慮した設計が必要です。

「耐力壁」に関するまとめ

耐力壁は、建物の安全性を大きく左右する重要な構造要素です。
適切に設置されることで、地震や強風に対する耐久性が大幅に向上し、住まいの安心感を高めます。

住宅の新築やリフォームを検討する際には、耐力壁の配置や材料についてはプロに相談し、安全で快適な住環境を実現するべきと言えます。
耐力壁を理解することは、住まい選びや設計において大きな助けになります。

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