「第一種低層住居専用地域(だいいっしゅていそうじゅうきょせんようちいき)」とは、都市計画法に基づいて定められる用途地域の一つです。
その名のとおり、低層の住宅を中心とした閑静な住環境を守ることを目的としており、日本の都市計画においても、特に落ち着いた住宅街を形成するために重要な役割を担っています。
第一種低層住居専用地域の基本理念
低層住宅を中心に街並みを整える
高層ビルやマンションなどの大規模な建物が立ち並ぶのではなく、2~3階建て程度の一戸建てや低層共同住宅を主体とした落ち着いた街並みづくりを重視しています。
静かで安全な住環境の保護
車の往来が激しい幹線道路沿いや、大型商業施設がある地域とは異なり、小さな子どもや高齢者が安心して暮らせる環境づくりに配慮されています。
商業施設や事務所、娯楽施設などの建設は厳しく制限され、騒音や混雑をなるべく防ぐ方針です。
建築できる建物の制限
建てられる主な建物
- 一戸建て住宅(戸建て)
- 一部の共同住宅(低層アパートやテラスハウスなど)
- 小規模な公共施設(公園の管理事務所など、条件に合うもの)
建てられない建物の例
- 大型商業施設(スーパーやショッピングモールなど)
- 大規模な事務所・オフィスビル
- パチンコ店やカラオケ店、ナイトクラブなどの娯楽施設
- 工場や倉庫
容積率・建蔽率の規制
第一種低層住居専用地域では、原則として容積率が低く設定されており(たとえば50%や60%)、建ぺい率も30~50%程度で制限されることが多いです。
ただそのような制限があることによって敷地にゆとりが生まれ、風通しや日当たりを確保しやすく、緑の多い街並みを保てます。
建物の高さ制限(絶対高さ制限)
地域によっては、建物の高さが10mまたは12m以下に制限される「絶対高さ制限」が適用される場合があります。
これによって、高層建築物の乱立を防ぎ、低層の街並みを維持します。
特有のルールや注意点
斜線制限
第一種低層住居専用地域では、北側斜線制限などの「斜線制限」が厳しく適用されることがあります。
隣地や道路側へ日陰が長くならないよう、建物の高さや形状に工夫が求められます。
外壁や屋根の色・デザイン規制(景観条例)
地域によっては独自の景観条例が設けられており、外壁や屋根の色、デザインに制限を設けられることもあります。
特に、美観や統一感を重視する住宅街では、まわりの住環境と調和するように要望されるケースがあります。
擁壁やフェンスの設置
傾斜地や高低差のある土地を利用する場合、擁壁(ようへき)を設けることがありますが、これらの高さや構造についても建築基準法や景観条例の規定に従う必要があります。
豆知識:第一種低層住居専用地域のメリットとデメリット
メリット
- 静かで落ち着いた住環境
周辺に大型店舗や繁華街がなく、車の通りも比較的少ないため、騒音が少なく小さな子どもがいる世帯や高齢者にとって安心です。 - 将来的な資産価値の安定
制限が厳しいぶん、大きく街並みが変わりにくいです。閑静な住宅地としての需要が高く、物件の価値が比較的安定しやすいといわれています。
デメリット
- 商業施設が少ない
コンビニやスーパーなど日常生活に必要な店舗が近くにない場合、買い物や外食に不便を感じることがあるかもしれません。 - 建築の自由度が低い
斜線制限や高さ制限、建ぺい率・容積率など、多くのルールに縛られるため、思いどおりの大きさやデザインの建物を立てづらい面があります。
「第一種低層住居専用地域」に関するまとめ
第一種低層住居専用地域は、低層住宅を中心とした閑静で安全な住環境を守るために設けられた用途地域です。
高いビルや大規模施設が建ちづらくなるなどの厳しい制限はありますが、その分、落ち着いた街並みや安定した資産価値を維持できるメリットがあります。
もし家を建てる際には、事前に用途地域や建築基準法、景観条例などをしっかり確認し、自分の理想とする暮らしやプランに合っているかどうかを見極めるようにしましょう。