「上棟式」は、建物の骨組みが完成し、屋根を支える「棟木(むなぎ)」を取り付ける際に行われる日本の伝統的な儀式です。
工事が無事に進むことを感謝し、引き続き安全を祈願する目的で行われます。「建前(たてまえ)」や「棟上げ(むねあげ)」とも呼ばれることがあります。
上棟式は地鎮祭とは異なるものです。
「地鎮祭」は、建物を建てる前に、その土地の神様(氏神様)を祀り、工事の安全や建物の無事完成を祈願する日本の伝統的な儀式です。「地祝い」や「鎮地祭」とも呼ばれ、土地を清めるとともに、その地に住む人々の安全や繁栄を祈る目的があります。地[…]
上棟式は必ずしも必須ではないため、現代では行わないというケースも増えつつあります。
上棟式の意味と目的
工事の節目を祝う
棟木が取り付けられる時点で、建物の基本構造が完成するため、それを祝い感謝する行事です。
工事の安全祈願
神様に工事関係者の安全を祈る。
建物の無事完成を祈る
建物がしっかり完成し、住む人が安心して暮らせるように祈ります。
施主と職人との交流
施主(家を建てる人)が職人への感謝を伝え、信頼関係を築く場ともなり得ます。
上棟式を行うタイミング
棟木が上がる日
家の骨組みが完成し、棟木を取り付ける日に行われます。
吉日を選ぶ
ひと昔前までは縁起の良い日(大安、友引など)を選ぶことが一般的でしたが、近年では施工スケジュールに合わせることも増えています。
上棟式の流れ
1.儀式の準備
神主を呼ぶ場合、祭壇を設置し、神事を執り行います。
2.清祓(きよはらい)
神主や施工責任者が、建物と参加者をお祓いして清めます。
3.棟札(むなふだ)の設置
棟木に「棟札」と呼ばれる木札を取り付けます。
棟札には記載する情報
- 施主の名前
- 建築年月日
- 建築会社や大工の名前
4.祝詞奏上(のりとそうじょう)
神主が工事の無事を祈る祝詞を読み上げます。
5.棟上げの儀
大工の棟梁(とうりょう)が棟木を取り付け、施主や家族が手を合わせて祈ります。
6.撒き餅やお菓子の配布(地域による)
建物の上から餅やお菓子を撒く「餅撒き」が行われることもあります。
7.直会(なおらい)
儀式の後に、職人や関係者とともに食事をする場が設けられることがあります。
上棟式の準備
神主や施工会社との打ち合わせ
儀式の内容を事前に確認します。
お供え物
米、酒、塩、水、果物などを準備しますが、地域や神社によって異なる場合があります。
棟札の作成
施工会社が用意する場合が多いですが、確認が必要です。
感謝の品や食事の準備
感謝の気持ちを込めて職人への手土産や軽食を用意することもあります。
上棟式の費用
相場
3万円から10万円程度。
ただし、儀式の規模や地域によって異なります。
内訳
- 神主への初穂料(玉串料)
2万~5万円 - お供え物や餅撒きの費用
- 職人への手土産や食事代
費用を抑える方法
神事を省略したり、簡易的な儀式にすることで負担を減らすことも可能です。
上棟式のメリット
工事の安全を祈願
職人や関係者が安心して作業に取り組める。
節目を祝う場として意義がある
施主や家族が家づくりの進行を実感できる。
職人との交流
感謝の気持ちを伝え、信頼関係を築く場として有意義。
地域とのつながりを深める
餅撒きなどを行う場合、近隣住民との交流が生まれる。
上棟式のデメリット
費用がかかる
儀式や手土産、食事代などが負担になる場合があります。
準備が必要
お供え物や参加者への配慮など、事前準備に時間がかかります。
上棟式に関する豆知識
餅撒きの由来
餅を撒くことで近隣住民に感謝を伝え、福を分け合うという風習があります。
地域による違い
地域ごとに儀式の内容や形式が異なる場合もあります。
省略も増加傾向
コストや時間の関係で、簡易的な形にする施主も増えてきています。
棟札は建物の歴史を記録
将来的に建物を解体した際、棟札が当時の記録として残ることがあります。
直会の食事
昔は豪華な宴席が主流でしたが、現在は軽食やお弁当で済ませることが一般的になっているので、そこまで本腰を入れて準備をする必要はありません。
上棟式が適している場面
- 新築住宅の建設
- 木造建築の骨組み完成時
- 地域に根差した建築プロジェクト
「上棟式」に関するまとめ
上棟式は、家づくりの大切な節目を祝う日本の伝統的な儀式です。
工事の安全を祈り、職人への感謝を伝える場として意義があります。ただし、現代では省略したり、簡略化するケースも増えており、施主の考え方や予算に応じた形で実施できます。
家族や関係者にとって思い出に残る一日として、上棟式を取り入れてみるのも良いでしょう。