
「グラスウール」は、建築や住宅の断熱材として広く利用されている素材の一つで、ガラスを繊維状に加工したものです。
柔らかく綿のような形状をしており、断熱性や吸音性に優れています。
主に壁や天井、床の内部に施工され、室内の温度や音の管理に大きな役割を果たします。
グラスウールの歴史は古く、紀元前の時代から使用されていたと言われています。
素材はガラスなので素手で触るとチクチク刺さるような感覚がおきます。
グラスウールの特徴
ガラスを原料にした繊維素材
リサイクルガラスを高温で溶かし、細い繊維状に加工したものです。
資源を無駄にせず、環境に優しい建材の一つです。
軽量で柔軟性がある
綿状の素材で扱いやすく、さまざまな形状や厚みに加工が可能です。
断熱性・吸音性に優れる
空気を多く含む構造により、熱がしにくく、断熱性能が高いです。
さらに入射した音を熱エネルギーに変換することで、音を伝えにくい性質があります。
火に強い
ガラスが主成分のため、不燃性で火に強いのも特徴です。
基本燃えませんが、仮に燃えても有毒ガスが発生しないため、人体や環境への悪影響はありません。
燃やしたらどうなる?
ライターなどであぶっても、シパシパシパっと着火することなく小さくしぼんでいきます。
グラスウールの用途
住宅の断熱材
壁、天井、床の断熱に使用されており、石膏ボードの下に設置されています。
断熱性能が高いので、グラスウールがあるだけで冷暖房効率は高くなります。
吸音材
騒音や室内の音の反響を抑えるため、スタジオやオフィスなどでも使われます。
それ以外にもシネマコンプレックス(集まる複数の映画館のこと)や体育館など音の響き調整などにも使用。
産業分野での断熱
工場やプラントの配管やタンク、空調ダクトや排気ダクトの断熱材としても活用されています。
リフォームやリノベーション
リフォーム時においては、既存の建物の断熱性能を向上させるためによく用いられます。
グラスウールのメリット
高い断熱性能
空気を多く含む構造が熱の伝導を防ぎ、室内温度を快適に保ちます。
優れた吸音性能
騒音対策や音響設備の音漏れ防止に効果的です。
不燃性で安全
ガラスが主成分のため、火に強く、燃え広がる心配がありません。
コストパフォーマンスが良い
他の断熱材と比べて安価で、手軽に使用できるのが何よりも魅力です。
人体や環境に優しい素材
リサイクルガラスを利用しており、環境負荷が低いのも特徴です。
また、国際がん研究機関による物質の発がん性評価において、「グループ3」”ヒトに対して発がん性が分類されない”に該当しています。
グラスウールのデメリット
施工時の注意が必要
細かい繊維が肌や目に触れるとチクチクすることがあり、防護具の着用が必要になる場合もあります。
結構チクチクするので素手では触らないようにしましょう。
ただ、相当小さなミクロン単位のガラス繊維で構成されているため、皮膚への影響は一過性です。
チクチクしたら?
グラスウールに触れた部分を温水や石鹸などで洗い流す、お風呂に入れば基本的にはもう大丈夫です。
それでも痒みや痛みが続く場合には、医師の診察を受けるようにしましょう。
湿気に弱い
湿気を吸収すると性能が低下するため、防湿対策が必要です。
例えば、外壁を一切メンテナンスしておらず雨漏りなどがあった場合には一気に性能が低下するので、時期がくれば外壁塗装などのメンテナンスを行うようにしましょう。
圧縮や劣化で性能低下
長期間の使用や過度な圧縮で形が崩れると、繊維が縮んで断熱性能が下がります。
つまり、ふわふわっとしている状態がもっとも性能を発揮している状態です。
廃棄の手間
廃材として処分する際には、ガラスくず、陶磁器くずとして扱われ、産業廃棄物として処理する必要があります。
グラスウールの施工方法
施工には技術が必要で、隙間なく埋めることで本来の断熱性能を発揮します。
準備
防護具(手袋、マスク、ゴーグル)を装着し、細かい繊維が体に触れないようにします。
ヒント
実際の職人さんを見ていてもそこまでやる人は少ないですが、少なからず皮膚や呼吸器への刺激を与える可能性があるため、出来るだけ防護するようにしましょう。
防湿シートの設置
湿気対策として、防湿シートを設置します。
切断と固定
必要なサイズに切り取り、壁や天井、床の骨組みにぴったり収まるように固定します。
これが的確でないと、あまり効果がない結果となるのでしっかりと埋めるようにしてください。
カバー材で保護
最後に、石膏ボードなどでカバーして仕上げます。
グラスウールに関する豆知識
「密度」で性能が変わる
グラスウールは密度が高いほど断熱性や吸音性が向上しますが、重くなるため施工性に影響する場合もあります。
しかし、出来るだけ隙間を作らずしっかり埋めるようにしておくことが大切です。
湿気対策が重要
防湿シートをきちんと併用することで、結露を防ぎ、性能を長期間維持することが出来ます。
メンテナンスが必要
古いグラスウールは劣化して性能が落ちるため、大規模リフォーム時には点検・交換することをおすすめします。
防音効果の活用例
スタジオや映画館で使用されるぐらいなので、ホームシアターやピアノ室などの防音室などの音響設備にも利用されることが多いです。
グラスウールが適している人
- コストを抑えたい人
性能が高く、比較的安価な断熱材を探している方。 - 防音効果を求める人
室内の音響や外部騒音を気にする方。 - DIYで断熱施工したい人
軽量で扱いやすく、自分で施工可能な素材を探している方。
「グラスウール」に関するまとめ
グラスウールは、断熱性や吸音性に優れたコストパフォーマンスの高い素材で、住宅や産業分野で幅広く使用されています。
施工時には防護具の着用や防湿対策が必要ですが、適切に管理すれば長期間にわたってその性能を発揮します。
リフォームや新築時に、グラスウールを活用して快適で省エネな住まいを実現しましょう。