「宅建士(たっけんし)」は、正式名称を「宅地建物取引士」といい、不動産取引に関する専門知識を持ち、法律に基づいて不動産取引を安全に進めるための資格を持つプロのことです。
不動産業界でのキャリアを目指す人はもちろん、マイホーム購入・不動産投資を検討している人にとっても、宅建士の知識は非常に役立ちます。
以前は宅地建物取引主任者という名称でしたが、2014年の「宅地建物取引業法の一部を改正する法律案」が可決され、翌2015年より名称、および内容が一部変更になりました。
宅建士の役割
重要事項説明の実施
不動産の売買や賃貸契約時に、物件や契約条件の重要事項を顧客に説明します。
これによって契約内容を正しく理解してもらい、トラブルを防ぎます。
契約書への記名・押印
不動産売買契約書や重要事項説明書に記名・押印することで、契約の適正性を保証します。
法令遵守と取引の適正化
不動産取引が法律に則り、公正かつ安全に進むよう監督します。
宅建士が必要な理由
法律に基づく義務
不動産業者が業務を行う際、取引に関与する宅建士を一定数配置することが法律によって義務付けられています。
この一定数配置とは、従業員5人に対して1人となり、6人以上の従業員がいれば2人必要、10人以上であれば3人の配置が必要になります。
顧客の信頼を得るため
宅建士が取引に関与することで、顧客は安心して契約を結ぶことができます。
専門的なアドバイスが可能
土地や建物の権利関係、法令上の制限、契約条件など、専門的な知識を提供できます。
実例
宅建士の数が多ければ多いほど信頼できる不動産会社である可能性は高いでしょう。
会社から取れ!と言われても簡単に取れる資格でもないため、モチベーションも高く、それなりにゆとりのある不動産会社であるといえます。
宅建士資格の取得方法
受験資格
年齢や学歴に制限はなく、誰でも受験できます。
試験内容
試験科目
- 権利関係(民法や借地借家法など。最難関、ここが出来なくても他でフォローしましょう。)
- 宅建業法(宅建取得を目指す方は最低でもここは100点を。狙えるので大丈夫です。)
- 法令上の制限(都市計画法、建築基準法など)
- その他(税法や土地建物に関する知識)
試験形式
全50問の4肢択一式。
合格率
毎年16%前後の合格率で、難易度は中程度。
ただし、実際にはきちんと学習さえすれば実質7割程度の合格率です。
どういう意味?
実際には、会社から取れ!と言われ、全く勉強をしていない、もしくはろくな勉強もしないで姿勢だけは崩さずに受験する方が多くいます。
実際に、きちんと学習している方の合格率は、平均合格率をはるかに凌駕する合格率になっています。
試験日程
毎年10月に全国で実施されます。
登録手続き
試験合格後、実務経験または登録実務講習を受け、宅建士として登録します。
主に出題される部分
「民法(みんぽう)」は、私たちの日常生活におけるルールを定めた法律です。契約や財産、家族関係など、個人間の関係を円滑にするための基本的なルールをまとめています。日本では、「一般法」として、さまざまな法律の基礎となる重要な役割を果たし[…]
「宅建業法(たっけんぎょうほう)」は、不動産取引におけるルールを定めた法律です。正式には「宅地建物取引業法」といい、不動産業者や取引の透明性、公正性を確保し、消費者の権利を守ることを目的としています。不動産の売買や賃貸を行う際、この[…]
都市の健全な発展や、住みやすい街づくりを実現するために、日本で定められている法律です。人口が密集する市街地や農地・山林など、さまざまな用途を持つ土地を「どのように使い、どのように整備していくか」を大枠で決める役割を担っています。都市[…]
日本において建物を安全かつ快適に使用できるように、構造や設備などに関する最低限の基準を定めた法律です。地震や火災などの災害リスクが高い日本では、建築基準法によって建物の品質を一定以上に保ち、人々の生命や財産を守ることを目指しています。[…]
宅建士のメリット
キャリアの幅が広がる
不動産業界だけでなく、建設業や金融業でも活躍の場があります。
独占業務がある
重要事項説明や契約書への記名・押印は、宅建士しか行えません。
収入アップが期待できる
不動産業界での需要が高く、資格手当がつくことが多いです。
実際問題、宅建士の資格は平均300時間の勉強時間で取得が狙えるため、費用対効果としてはかなり高い資格の一つになりうるでしょう。
法律知識の習得
資格取得の過程で学ぶ法律知識は、日常生活や資産運用にも役立ちます。
宅建士のデメリット
資格取得に時間と努力が必要
試験範囲が広く、合格するためには継続的な学習が必要です。
ヒント
年が明けて少し経った、もしくは繁忙期を終えた4月(ただし、後発組は1日最低2時間)から学習してもまだ間に合います。
4月から7月(申し込み申請時期)までは基本的な学習、試験までのそれ以降は過去問を繰り返し行うことで対策が可能です。
更新手続きが必要
宅建士証の有効期間は5年間で、更新時に講習を受ける必要があります。
実務経験が求められる場合がある
宅建士として登録する際、実務経験または講習の受講が必要です。
宅建士に関する豆知識
試験は独学でも合格可能
昨今では試験対策の教材やオンライン講座が充実しているため、独学であっても十分合格を目指せます。
不動産業界での需要が高い
宅建士は法律で配置が義務付けられているため、不動産業界での求人が多いです。
スキルアップに有効
宅建士の資格取得は、ファイナンシャルプランナーや賃貸不動産経営管理士など、他の関連資格へのステップアップに繋がります。
「ファイナンシャルプランナー(FP)」は、家計や企業の資金計画をサポートする専門家です。ライフプランや経済的な目標を実現するために、収入・支出、貯蓄、投資、保険、税金、相続などの幅広い分野でアドバイスを行います。ファイナンシャルプラ[…]
「賃貸不動産経営管理士(ちんたいふどうさんけいえいかんりし)」は、賃貸不動産の管理や運営に関する専門知識を持つ国家資格者です。賃貸物件のオーナー(大家)や借主(入居者)の間で発生する問題を解決し、不動産の収益性や安全性を高めるためのアド[…]
受験生の年齢層が幅広い
20代の若者から60代の社会人まで、幅広い年齢層が受験しています。
資格手当が充実
宅建士を取得すると、月に1~3万円程度の資格手当を受けられる企業が多いです。
宅建士が適している人
- 不動産業界で働きたい人
資格があると転職や昇進に有利です。 - 法律知識を身につけたい人
不動産に関する法律や契約知識を学べます。 - 副業や独立を目指す人
宅建士の知識を活かして不動産投資やコンサルタント業務も可能です。
宅建士を目指す際の注意点
なにって試験範囲が広い
とにかく試験範囲が広いので、計画的に学習を進めることが合格への近道です。
ただ、まずは宅建業法だけは100点満点を目指すように学習しましょう。合格への近道です。
過去問演習が重要
過去問を繰り返し解くことで、出題傾向を把握できます。
基礎学習で知識を得れたら、そのあとは本気で過去問を繰り返し行ってください。
実務経験が求められる場合がある
登録時に必要な条件を事前に確認しておきましょう。
ただ、実際にはそこまで気にする必要はありません。まずは合格を目指します。
「宅地建物取引」に関するまとめ
宅建士は、不動産取引のプロとして、多くの場面で重要な役割を果たします。
不動産業界で働く人だけでなく、法律や資産運用に興味がある人にとっても、取得する価値の高い資格です。
計画的な学習と実務経験を積むことで、宅建士としてのキャリアをスタートさせ、安全で適正な不動産取引を支える存在を目指しましょう!