「権利書」とは、不動産の所有権や抵当権など、重要な権利関係を示すための書類を一般的に呼ぶ際の名称です。
法務局で登記手続きを行った際に発行される「登記済証(とうきずみしょう)」や、現在主流となっている「登記識別情報通知書」が、いわゆる権利書に相当します。
権利書の役割
権利書は、不動産を売買・贈与・相続などで取得したとき、登記完了後に法務局から受け取る書類で、「この不動産の権利者は私である」と証明する役割を持ちます。具体的には、以下のような情報が含まれます。
- 登記名義人(所有者)の氏名
- 不動産の所在や地番・家屋番号
- 法務局が登記を完了した印(登記官の押印など)
これらの情報により、物件の権利関係が確認できるようになっているのです。
「登記済証」から「登記識別情報」へ
かつては紙の「登記済証」が主流でしたが、現在はICチップのパスワードのような形で管理する「登記識別情報通知書」が一般的です。
12桁程度の英数字が印字され、これがかつての「登記済証」の代わりとして機能します。
登記済証(旧来の権利書)
法務局の登記官が押印した紙ベースの書類
登記識別情報通知書(現行の権利書)
シールで隠された英数字のパスワードが記載された紙
どちらも法的効力としては同じで、不動産を売却する際や抵当権を設定する際に必要となります。
権利書が必要になる場面
不動産の売却・贈与・担保設定など
売買契約や抵当権の設定時に、所有権の移転や権利変更を行うために必要です。
相続・遺産分割時
相続登記をする際、被相続人が持っていた権利書を確認することで、登記手続きをスムーズに進められます。
権利書がないと、新たに「事前通知制度」や「本人確認情報の提供」といった別の方法で手続きをする必要があり、時間や費用がかかることもあります。
保管のポイントと注意点
安全な場所に保管する
銀行の貸金庫や自宅の金庫、耐火金庫などが望ましいです。紛失や盗難に遭うとトラブルの原因になります。
コピーやデジタル化だけでは不十分
コピーや写真では正式な効力がないため、原本や登記識別情報のパスワードを必ず保管しましょう。
家族に保管場所を伝える
相続時や緊急時のために、少なくとも家族や信頼できる人には場所を知らせておくと安心です。
豆知識
紛失しても所有権はなくならない
権利書は権利そのものではなく、あくまで証明の役割です。紛失しても所有権が消えるわけではありませんが、再発行はできず、手続きが面倒になります。
権利書は1つだけとは限らない
複数の不動産を所有している場合、それぞれの物件に対して権利書が存在します。
登記名義変更をしていないと権利書が存在しない場合も
古いまま名義変更が行われず、実質的な所有者が誰なのか分からなくなるケースもあるため、相続などの際は早めに登記変更しましょう。
「権利書」に関するまとめ
権利書は、不動産の権利関係を証明するための非常に重要な書類です。
旧来の登記済証から登記識別情報へ移行した現在でも、「権利書」という呼び方は広く使われています。
万が一紛失すると、売却や抵当権設定などの際に余計な時間と手間がかかるため、安全な場所での保管が必須です。家族と共有しておく、あるいは専門家(司法書士など)と連携することで、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。
不動産を大切に守るために、権利書の存在と管理をしっかりと意識しておきましょう。