「アパート経営を法人化しようか迷っているけど、メリットやデメリットがイマイチよくわからない…」
そんな悩みをお持ちのあなたへ。この記事では、アパート経営の法人化について、そのメリット・デメリットを徹底解説します。さらに、法人化によって得られる具体的なメリットや、スムーズに手続きを進めるための方法、そして成功事例までご紹介します。
法人化のメリットを最大限に活かし、あなたの理想とするアパート経営を実現するための第一歩を踏み出しましょう!
アパート経営の法人化とは?基礎知識と定義
法人化(法人成り)とは
アパート経営の法人化とは、個人事業主として行っていた事業を、株式会社や合同会社などの法人組織に移行することです。これによって、事業の安定化や税金対策、相続対策などのメリットが期待できるというものです。
法人化の主なメリット
- 事業の安定化
法人化することで、事業の責任が法人へと移行するため、個人資産と事業資産が分離され、事業の失敗による個人の財産損失のリスクを軽減できます。 - 税金対策
法人税率は、個人事業主の所得税率と比較して低く設定されている場合があり、節税効果が期待できます。また、法人では経費の範囲が広くなるため、節税効果を高めやすくなります。 - 相続対策
法人化することで、事業の承継がスムーズに行えます。また、相続税対策として、事業を法人化するケースも増えています。
実例
山田太郎さん(仮名)の場合
山田さんは個人事業主としてアパート経営を行っていましたが、事業拡大のため資金調達が必要になりました。しかし、個人事業主では融資が受けにくい状況でした。そこで、事業を法人化することで、銀行からの融資を受けやすくなり、事業を拡大することができました。
佐藤花子さん(仮名)の場合
東京都内でアパート経営を行っている佐藤さんは、個人事業主として10年間運営していましたが、収益が安定してきたため法人化を決断しました。法人化後、以下のような変化がありました
- 所得税の実効税率が低下し、年間で約200万円の税負担が軽減。
- 法人名義での経営により、相続時に資産を分割せずに済む。
- 経費計上が容易になり、資金繰りが改善。
アパート経営の法人化は、税制上のメリットや経営の安定化を図るための有効な手段と言えます。
法人化により、節税効果や相続対策が可能となり、経営の継続性が確保されます。
一方で、設立や運営に伴う手間と費用が発生するため、十分な検討と準備が必要です。
法人化のメリットを最大限に活用するために、レントロールなどを準備し、専門家のアドバイスを受けてみても良いでしょう。
法人化が成り立つ条件とタイミング
今まで個人事業主として行っていた事業を、株式会社や合同会社などの法人組織に移行することになりますが、法人化には明確なメリットとデメリットが存在し、それらを理解した上で、経営状況や将来計画を考慮し、適切なタイミングで判断することが必要になります。
法人化が成り立つ条件
法人化は、単に事業規模が大きければ良いというものではありません。
法人化が有効なケースを簡単にまとめてみましょう。
法人化が有効なケース | 詳細 |
---|---|
収益規模が大きい | 年間の課税所得が1,000万円を超える場合、法人税率が個人事業主の所得税率よりも低くなる可能性があり、節税効果が期待できる |
事業拡大を計画している | 法人化することで、銀行からの融資を受けやすくなり、事業拡大に必要な資金を調達しやすくなる |
相続対策を検討している | 法人化することで、相続税対策として、事業をスムーズに承継できる |
事業の責任を明確化したい | 法人化することで、個人資産と事業資産が分離され、事業の失敗による個人の財産損失のリスクを軽減できる |
将来、事業を子供に継承したい | 法人化することで、事業をスムーズに次世代に承継できる |
アパート経営を法人化するメリット
その1 法人化による節税効果
アパート経営を法人化すると、個人事業主と比べて税金面で有利な点が多く、節税効果が期待できます。特に、所得税の税率が低くなるケースや、経費の範囲が広がることで、節税効果が大きくなります。
また、損失の繰り越し期間が長くなるなどのメリットもあります。
主な節税効果
- 法人税率の低さ
法人税率は、個人事業主の所得税率と比べて低く設定されている場合があり、節税効果が期待できます。
※ 2023年度の法人税率は、課税所得が1,900万円以下であれば15%、1億9,000万円以下であれば23.2%、1億9,000万円超であれば24.2%です。一方、個人事業主の所得税率は、所得金額によって変動しますが、最高税率は45%です。 - 経費計上の範囲拡大
法人では、個人事業主よりも経費計上の範囲が広がります。例えば、役員報酬や交際費、福利厚生費などを経費として計上できるため、課税所得を減らし、節税効果を高めることができます。 - 損益通算
法人では、事業の損失を他の事業の利益と通算することができます。これによって、税金負担を軽減することができます。 - 赤字の繰越期間
法人では、赤字を7年間繰り越して、将来の利益と相殺することができます。個人事業主の場合、赤字を繰り越せる期間は3年間と、法人よりも短い期間です。
その2 相続・贈与が簡素化される
アパート経営を法人化することで、相続や贈与の手続きがスムーズに進み、税負担が軽減されるなどのメリットがあります。
法人化により、株式を利用した所有権の移転が簡単になり、相続や贈与に伴う複雑な手続きが簡素化されるため、資産継承の計画が効率的に実施できます。
簡素化される項目
- 事業の承継がスムーズ
法人化することで、事業の所有者が法人となるため、相続や贈与の際に、事業をそのまま次世代に引き継ぐことができます。個人事業主の場合、事業の承継には、事業の譲渡や相続手続きなど、複雑な手続きが必要となる場合があります。 - 相続税対策
法人化することで、事業の評価額が下がるケースがあり、相続税の負担を軽減することができます。 - 贈与税対策
法人化することで、株式の贈与によって、事業をスムーズに次世代へ移行させることができます。また、株式の贈与は、不動産の直接贈与と比べて、贈与税の負担を軽減できるケースがあります。 - 遺産分割協議の簡素化
法人化することで、事業の分割が容易になり、遺産分割協議がスムーズに行えます。
実例
三橋さん(仮名)の場合
三橋さんは、個人事業主としてアパート経営を行っていましたが、高齢になったため、事業を息子に継承することを考えていました。
しかし、個人事業主のままでは、事業の承継手続きが複雑で、息子も事業を引き継ぐことに不安を感じていました。
そこで、事業を法人化することで、事業をスムーズに息子に継承することができ、息子も事業を引き継ぐことに安心して取り組むことができるようになりました。
近年では終活も含め、このように事業の継承や相続に対する問題は今後かなり増えてきています。大事になってから動くより事前に対策しておくことで親族に迷惑をかけることなく継承することが出来ます。
その3 経営の安定化と信用の向上
アパート経営を法人化することで、事業の安定化と信用向上を図ることができます。
それによって資金調達が容易になり、社会的信用が高まるため、長期的な安定経営を実現しやすくなります。
経営の安定化と信用向上に寄与する理由
- 資金調達の容易化
法人化により、法人名義での融資や投資が受けやすくなります。法人の方が個人よりも信用力が高いため、金融機関からの資金調達がスムーズに行えます(日本政策金融公庫のデータによると、法人の方が融資審査で有利な条件が多い)。 - 社会的信用の向上
法人化すると、法人名義での契約や取引が可能となり、社会的な信用が向上します。法人は法人格として独立した存在であり、信用度が高く見られるため、取引先や顧客からの信頼も得やすくなります。 - 経営の継続性
法人化することで、事業が法人として継続するため、経営の安定性が増します。法人の存在は法人の登記により確立され、経営者の変更や死亡などのリスクが個人経営に比べて少なくなります。 - 有限責任
法人化により、経営者や投資家の責任は出資額の範囲内に限定されます。これにより、経営上のリスクが限定され、経営者自身の個人資産が保護されます(法務省の商法に基づく)。
法人でやりとりすることで銀行から信頼されれば、より有利な条件で融資を受けられることも増えるため、新たなビジネスチャンスを広げることだってできます。
アパート経営を法人化するデメリットとその対処法
アパート経営を法人化すると、税金対策や事業の安定化などのメリットがある一方で、設立費用や運営コストなどのデメリットも存在します。
しかし、適切な対策を講じることで、これらのデメリットを最小限に抑えることができます。
設立および運営コストの増加
法人設立には、登記手続きや定款作成、登録免許税などのコストがかかります。同時に、株主総会や取締役会などの運営手続きが義務付けられます。
加えて、法人の運営には年次の法人税申告、会計業務が必要となり、これもコストに含まれます(設立費用は数十万円程度、年間の会計・税務コストも数十万円に及ぶことが多い)。
対処法
設立時に必要な費用は予算に計上し、コスト削減のために税理士の助言を受けることをおすすめします。
費用対効果を考慮し、適切な法人設立プランを選択するようにしましょう。
複雑な税務処理
法人化により、法人税、法人住民税、法人事業税など複数の税金が発生し、個人事業主の時よりも複雑なケースは間違いなく多くなります。
また、税務調査の確率が高くなります。これは、法人の方が個人事業主よりも、税務申告の複雑さや不正が行われる可能性が高いと見なされるためです。
対処法
税務処理を専門の税理士に依頼し、税務リスクを最小限に抑えることをおすすめします。適切な税務戦略を立てることで、節税対策を講じることが可能です。
社会保険の加入義務
法人化すると、社会保険(健康保険、厚生年金など)への加入が義務付けられます。これによって、個人事業主にはなかった保険料負担が発生します(法人の社会保険料負担は個人事業主の約2倍に達します)。
対処法
社会保険料の負担を見積もり、事前に予算に組み込むことが大切です。また、保険料の最適化を図るために、こちらもアドバイスを受けることをお勧めします。
【アパート経営の法人化】メリットとデメリット、そしてその鍵は?
アパート経営を法人化すると、税金対策や事業の安定化、相続対策など、様々なメリットが期待できる一方で、設立費用や運営コストなどのデメリットも存在します。
法人化のメリット
節税効果: 法人税率は個人事業主の所得税率よりも低く、経費の範囲も広いため、税金負担を軽減できます。
事業の安定化: 個人資産と事業資産が分離され、事業の失敗による個人の財産損失リスクを軽減できます。
相続対策: 事業をスムーズに次世代に承継できます。
資金調達: 銀行からの融資が受けやすくなり、事業拡大がスムーズになります。
法人化のデメリット
設立費用: 設立には登記費用や専門家費用など、初期費用がかかります。
運営コスト: 会計処理や税務申告など、運営コストが発生します。
税務調査: 法人化すると、税務調査の確率が高まります。
法人化のカギ
- 専門家との連携
税理士や弁護士など、専門家と連携して、適切な手続きを進めることが重要です。 - メリットとデメリットの比較検討
法人化のメリットとデメリットを比較検討し、自分の経営状況や目的に合った判断をすることが大切です。
アパート経営の法人化に関するQ&A
とはいえアパート経営を円滑に進めるためには、専門知識やスキルが必要となる部分もあります。
そのため、必要に応じて、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、マンション管理士などの資格を取得することを検討しましょう。
法人化を検討する際には、弁護士や税理士と相談し、自分の状況に合った方法を選択するようにしましょう。
アパート経営を法人化する場合、設立費用、運営費用、税金など、様々なコストが発生します。これらのコストは、法人形態や事業規模によって異なるため、事前にしっかりと見積もりを行い、予算を立てることが大切ですね。
下記にざっくり書き出してみました。参考にどうぞ。
コスト項目 | 費用例 |
---|---|
設立費用 | 【登記費用】10万円~20万円 【定款作成費用】5万円~10万円 【印鑑作成費用】1万円~5万円 |
運営費用 | 【会計処理費用】月額3万円~5万円 【社労士費用】月額1万円~3万円 |
税金 | 【法人税】利益の15%~24.2% 【法人住民税】利益の8%~10% 【法人事業税】事業の種類によって異なる |