退去時のクリーニング相場は？誰が負担？1K 2万円〜3LDK 16万円の内訳を解説

「退去時のクリーニング費用、いくらかかるんだろう…」
「敷金は返ってくるのかな？」

引っ越しを控えたあなたは、今そんな不安を抱えているのではないでしょうか。
実際、退去費用の相場を知らずに立ち会った結果、「えっ、こんなに請求されるの！？」と驚く人は少なくありません。中には、敷金14万円が全額なくなり、さらに追加で5万円請求されたケースも。

でも安心してください。相場を知り、正しい対策をすれば退去費用は大幅に抑えられます。

この記事では、1K〜3LDKまでの間取り別相場、高額請求される4大原因、費用を5万円以上節約する具体的な方法を、不動産業のプロがわかりやすく解説します。
読み終わる頃には、退去費用の不安が消え、新生活の資金計画が立てられるようになっているはずです。

退去時のハウスクリーニングとは？

ハウスクリーニングと原状回復の違い

退去時には「ハウスクリーニング」と「原状回復」という2つの異なる作業があり、目的も費用も大きく違います。簡単に言うと、ハウスクリーニングは文字通りの「掃除」、原状回復は「修理・修繕」です。

この2つを混同してしまうと、退去時に「思っていたより高額な請求が来た」というトラブルになりかねません。それぞれの違いを正しく理解しておくようにしておきましょう。
国土交通省のガイドラインでも、この2つは明確に区別されていて、実際に、国民生活センターの統計によれば、賃貸住宅の原状回復に関する相談は年間1万件以上寄せられており、その多くが「ハウスクリーニング費用」と「原状回復費用」の違いを理解していなかったことが原因とされています。

具体的な作業の違い

退去時には、まず「掃除で済む範囲(ハウスクリーニング)」と「修理が必要な範囲(原状回復)」を分けて考えましょう。

ハウスクリーニングは特約がなければ本来は大家さんの負担ですが、多くの賃貸契約では借主負担の特約が付いていることのほうが多い(詳しくは後述します)です。

一方、原状回復は「わざと壊した」「不注意で傷つけた」場合のみ借主が負担します。

契約書を確認して、自分がどこまで負担する必要があるのかを退去前にしっかり把握しておくことが、予想外の出費を防ぐ第一歩ですね

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退去費用の内訳（クリーニング費用・修繕費用・鍵交換費用など）

退去時に請求される費用は、大きく分けて5つの項目があります。
敷金から差し引かれる金額の内訳を知っておけば、「なんでこんなに請求されるの？」という不安が解消できます。

多くの人が退去時に驚くのは、「思っていたより敷金が返ってこなかった」というケースです。
これは退去費用の内訳を理解していないことが原因といえます。

原状回復の費用の詳細はここでは割愛しますが、他記事で紹介していますので、そちらも併せてごらんください。

退去費用は「何にいくらかかるか」を事前に知っておくと良いでしょう。

特に注意すべきは以下の3点です。

★ 契約書の特約を確認する（一番大事！何が借主負担になっているか）
★ 敷金の金額と退去費用の見積もりを比較する（追加請求があるか、返金があるか）
★ 自分の責任による損傷は借主負担（タバコ、ペット、不注意による傷など）

敷金2ヶ月分（家賃7万円なら14万円）を払っていても、タバコのヤニ汚れやペットによる傷があると、壁紙全面張替えで10万円以上かかることもあります。その場合は敷金がほとんど返ってこないか、追加請求されることもあります。
退去が決まったら、まず契約書を確認して「何が自分の負担になるのか」を把握しましょう。
できる範囲で掃除をしておけば、追加費用を最小限に抑えられます。

クリーニング費用は誰が負担する？国のガイドラインと実態

国土交通省のガイドラインでは原則「貸主負担」

ところで、国土交通省が定めた「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、退去時のハウスクリーニング費用は原則として大家さん（貸主）が負担すべきものとされています。

なぜ大家さんが負担するのか。
それは、ハウスクリーニングが「次の入居者を迎えるための準備」だからです。

国土交通省のガイドラインでは、原状回復について次のように定義しています。

「原状回復とは、借主の居住により発生した建物価値の減少のうち、借主の故意・過失、善管注意義務違反などによるものを復旧すること」

つまり、普通に生活していてついた汚れや劣化は「通常損耗」とみなされ、大家さんが負担すべきという考え方です。
ハウスクリーニングはこの「通常損耗の回復」に含まれるため、本来は大家さんの負担になります。

なぜ実際には借主負担が多いのか？

ここで疑問が湧きますよね。

「でも、契約書には『借主負担』って書いてあるけど？」

その理由は「特約」があるからです。
国土交通省のガイドラインは法律ではなく、あくまで「指針」です。そのため、契約書に特約として「退去時のハウスクリーニング費用は借主が負担する」と明記され、入居者が同意していれば、その特約が有効になります。
実際、東京都内では約9割超の賃貸物件で、このハウスクリーニング特約が設けられています。

ですのでハウスクリーニング費用負担について、重要なのは以下の2点です。

1. ガイドラインを知っておくこと

本来は大家さんの負担であることを知っていれば、不当に高額な請求をされた時に交渉材料になります。
「これは経年劣化だから大家さんの負担では？」と主張できます

2. 契約書の特約を必ず確認すること

入居前に契約書を読んで、何が借主負担になっているか把握しましょう。
特約がある場合は支払う義務がありますが、特約がなければ支払う必要はありません。

もし退去時に「これって私が払うべきなの？」と疑問に思ったら、国土交通省のガイドラインを確認してみてください。
知識があれば、不当な請求から自分を守ることができます。

【最重要】退去時のハウスクリーニング費用相場

間取り別の料金相場一覧（1K～一戸建てまで）

退去時のハウスクリーニング費用は、部屋の広さ（間取り）によって大きく変わります。
1Kなら3万～4万円程度ですが、3LDKになると7万～13万円以上かかることもあります。

なぜ間取りで費用が変わるのか？
それは単純に「掃除する面積が広くなるほど、作業時間と労力がかかる」からです。

業界の標準的な計算方法として、1平米あたり約1,000円が相場とされています。つまり、20平米のワンルームなら約2万円、50平米の2LDKなら約5万円という計算です。
また、部屋数が増えれば水回り（キッチン、浴室、トイレ）の数も増えるため、その分費用も上がります。

【間取り別】ハウスクリーニング費用相場一覧

なぜこんなに幅があるの？

同じ間取りでも費用に差が出る理由はおおむね以下の通りです。
一方で、最低料金は決まっていることが多く、それ以上に安く抑えられることは非常に少ない割合です。

退去費用を予測するには、まずは自分の部屋の間取りに対応する相場を知ることが第一歩です。

契約書に「一律3万円」と書かれていればそれ以上請求されませんし、「実費請求」の場合は、上記の相場が目安になります。
相場より明らかに高い請求がきたら交渉するようにしてみましょう。それと同時に、見積(請求)の内訳を詳しく聞いてみるのも一つです。

空室時と入居中での相場の違い

退去時のハウスクリーニングは、荷物を全部出した後（空室時）の方が、荷物がある状態（入居中）より1.2～1.5倍安くなります。
1Kなら5,000円～1万円、2LDKなら1万～2万円も差が出ることがあります。

なぜこんなに差が出るのか？
それは「作業のしやすさ」が全く違うからです。

荷物がない空室なら、業者はスムーズに作業できます。
でも、家具や荷物がある状態では養生シートで保護する必要や、重い家具を動かしながらの掃除が必要、細かい場所に手が届かなかったりと手間が増えます。
その上作業時間が長くなれば、その分人件費も高くなります。
業者の作業員の時給を3,000円とすると、2時間余計にかかるだけで6,000円の差が出る計算です。

空室時と入居中の料金比較

クリーニング費用を抑えたいなら、荷物を全部出してから依頼するのが鉄則です！

高額請求されやすいポイントと実例

退去費用で高額請求されやすいのは、「タバコのヤニ汚れ」「ペットによる傷・臭い」「放置したカビ」「DIYや無断改造」の4つです。
これらは通常のクリーニングでは対応できず、壁紙の全面張替えや特殊清掃が必要になるため、10万円を超える請求になることも珍しくありません。

なぜこの4つが特に高額になるのでしょう？
それは「クリーニングだけでは元に戻らない」からです。
実際に国土交通省のガイドラインでも、これらは「借主の故意・過失による損耗」とみなされ、原状回復費用を借主が負担すべきものと明記されています。

これ以降は原状回復含むクリーニング代での解説になりますが、参考程度にお読みください。

タバコのヤニ汚れ・臭い

タバコを室内で吸っていた場合、退去時に5万～20万円(原状回復)の高額請求になる可能性が高いです。これは「通常の使用による損耗」とはみなされず、100%借主の負担になります。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、喫煙による壁紙の変色や臭いは「借主の負担」と明確に定められています。
また、タバコのタールは壁紙だけでなく、畳、カーテンレール、エアコン内部など、部屋中のあらゆる素材に染み込みます。そのため、クリーニングだけでなく「特殊消臭作業」も必要になり、費用がどんどん膨らんでいきます。
それプラス壁紙や床材の張替費用が請求されます。

退去立会いの時点で、管理会社のスタッフが見れば一発でわかります。プロは臭いや壁紙の色を見て、喫煙の有無を簡単に判別します。

これらのパターンはどうなる？

ハウスクリーニングなのか、原状回復なのか曖昧なケースを写真とともに解説するので参考にしてみてください。

ヤニで汚れた照明やモニターフォン	窓サッシのヤニ汚れ	木部のヤニ汚れ	窓ガラスに付着したヤニ
原状回復の範囲：通常は借主負担で取替	ケースバイケース：借主負担で再塗装or追加清掃費用	原状回復の範囲：借主負担で再塗装	ハウスクリーニング：追加清掃費用

電子タバコ・加熱式タバコなら大丈夫？

言い切ることは出来ませんが、基本はごまかせるはずです。

少なくとも私の現役時代で、退去立会を行っていた際は吸っていたことが把握出来ても請求したことがありません。

ただ結局、一番確実な対策は「室内で吸わない」ことだけです。
外で吸う習慣をつければ、退去時に10万円以上浮きます。そのお金で新居の家具を買った方が、よっぽど有意義ですよね。

もし今、部屋でタバコを吸っているなら、今日から外で吸うようにしましょう。1日でも早く対策すれば、被害を最小限に抑えられます。

ペットによる傷・臭い・汚れ

ペット可物件でペットを飼っていた場合、退去時に10万～50万円の高額請求になることがあります。
「ペット可」とは「ペットを飼ってもいい」という意味であって、「傷つけてもいい」という意味ではありません。傷や臭いは100%借主の負担です。

ペットによる被害は、タバコのヤニ以上に深刻なケースが多いです。
なぜなら、物理的な「傷」と化学的な「臭い」の両方が発生するからです。
国土交通省のガイドラインでも、ペットによる損傷は「借主の故意・過失による損耗」として、明確に借主負担と定められています。

ただし、傷もなければ臭いも残ってない場合は、一切の追加請求がないというケースももちろんあるので、そういった部屋だった場合にはご安心を。

ペットを飼うなら、退去時に20万～30万円かかる可能性があることを最初から想定しておきましょう。
それが嫌なら、ペット可物件でも飼わない方がいいです。
でも、予防策を徹底すれば、被害を最小限に抑えることはできます。

1. 爪の管理
2. 床・壁の保護
3. トイレのしつけ
4. こまめな掃除

これらを実践すれば、30万円かかるところを15万円に抑えられるかもしれません。
大切なペットとの生活を楽しみながら、退去時のトラブルを避けるために、今日からできることを始めましょう。

カビ汚れの放置

浴室や窓枠、クローゼットなどにカビを放置していた場合、退去時に3万～10万円の追加請求になる可能性があります。
カビは「経年劣化」ではなく、「掃除を怠った」という善管注意義務違反とみなされ、100%借主の負担です。

なぜカビが借主の責任になるのでしょう？
それは「定期的な換気や掃除をしていれば防げたはず」と判断されるからです。
国土交通省のガイドラインでは、「借主は善良な管理者としての注意義務を負う」と定められています。これは法律用語で「善管注意義務」と呼ばれ、普通に生活する人なら当然やるべき管理をしなければならないという意味です。

具体的には

• 定期的な換気をする
• こまめに掃除をする
• 水気をそのままにしない
• カビを見つけたら早めに除去する

これらを怠ってカビを発生させた、または放置した場合、借主の責任として修復費用を負担することになります。

「建物の構造が悪い」は通用しない？

通用する場合と通用しない場合がありますが、ほとんどのケースで借主負担になるケースが多いです。

通用する場合（大家負担）

• 雨漏りによるカビ
• 配管の水漏れによるカビ
• 建物の欠陥による結露（二重窓がないなど）

通用しない場合（借主負担）

• 「湿気が多い地域だから」
• 「窓が結露しやすい構造だから」
• 「換気扇の音がうるさいから使わなかった」
• 「忙しくて掃除できなかった」

雨漏りを確認出来たらすぐに管理会社や大家さんへ連絡するようにしてください。

DIYによる傷や改造

「おしゃれな部屋にしたい」とDIYで壁に棚を取り付けたり、壁紙を張り替えたりすると、退去時に5万～30万円の高額請求になります。
賃貸物件の原則は「元に戻すこと」。勝手に改造した部分は、すべて元の状態に戻す費用を負担しなければなりません。

なぜDIYが高額請求につながるのか？
それは「原状回復」の原則に反するからです。
国土交通省のガイドラインでは、「借主は退去時に入居前の状態に戻す義務がある」と定められています。つまり、自分で加えた変更は、すべて元に戻さなければなりません。

特に問題になるケース

1. 壁に穴を開けた（ネジ、釘）
2. 壁紙を張り替えた
3. 壁を塗装した
4. フローリングに何かを接着した
5. 設備を勝手に交換した

これらは「通常の使用」を超えた改造とみなされ、100%借主負担になります。
押しピン穴はポスターやカレンダー等貼ったりによく使用されますが、通常使用の範囲です。

「自分の家じゃないから好きにできない」と不満に思うかもしれません。
でも、それが「賃貸」です。自由にカスタマイズしたいなら、いつか自分の家を持ったときに思う存分やりましょう。

許可を取っていても費用負担？

「管理会社に許可を取ってDIYした」という場合でも、注意が必要です。

重要なのは「書面で原状回復不要と書かれているか」です。
口頭で「いいよ」と言われただけでは、退去時に「元に戻してください」と言われる可能性があります。

【まとめ】退去時のハウスクリーニング費用相場

退去時のハウスクリーニング費用は、間取りによって大きく変わります。

1Kで3万～4万円、2LDKで5万～7.5万円、3LDK以上では7万～16万円が相場です。
国土交通省のガイドラインでは「原則として貸主負担」とされていますが、実際には約9割の賃貸契約で「借主負担」の特約が設けられています。
契約書の確認が必須です。

特に注意すべきは、タバコのヤニ汚れ（5万～20万円）、ペットの傷や臭い（10万～50万円）、カビの放置（3万～10万円）、DIYによる改造（5万～30万円）です。
これらは通常のクリーニング費用に加えて請求されるため、敷金だけでは足りず追加請求になるケースが多くあります。

費用を抑えるには、入居中の定期的な掃除と換気、退去前の自己清掃、荷物搬出後の空室状態での依頼が効果的で、また、入居時に部屋の状態を写真で記録しておくことで、不当な請求を防げます。

ハウスクリーニングに関するQ&A