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トラブル回避!相続放棄と遺品整理の正しい進め方

「遺品整理と相続放棄、どう進めればいいの?」

故人の死後、悲しみの中、手続きの複雑さに戸惑っていませんか?特に、故人に借金などの負債がある場合、相続放棄を検討する方も多いでしょう。しかし、相続放棄と遺品整理の関係性、正しい手順が分からず不安を抱えている方も少なくないはずです。

この記事では、相続放棄と遺品整理の手順や注意点、費用、よくある疑問などを分かりやすく解説します。相続放棄をスムーズに進めるための具体的な方法、遺品整理でやってはいけないこと、費用を抑えるための対策など、実例を交えて詳しく解説することで、あなたの不安を解消します。

この記事を読むことで、きっと相続放棄と遺品整理を安心して進めることができるはずです。
精神的・経済的な負担を軽減し、新たな一歩を踏み出すためにも、ぜひ最後までお読みください。

今回の記事は不動産に絡んでくる点があるので記事にしておりますが、実際の手続きは個人で行うのではなく弁護士や司法書士などに相談しながら行うようにしてください。

目次

相続放棄と遺品整理の基礎知識

相続放棄とは何か

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産(マイナスの財産だけでなくプラス財産も)を一切相続しないことを、法的手続きを通じて表明する制度です。つまり、借金(マイナス財産)などの負債を背負わずに済みます。
財産も債務(借金)も全て放棄することになり、この決定は取り消すことができません。

民法第938条・第939条に基づく法的手続きです。
相続開始を知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述する必要があります。

第三節 相続の放棄
(相続の放棄の方式)
第九百三十八条 相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

民法 | e-GOV 法令検索より伐採

法務省のデータによると、2022年の相続放棄申述件数は約24万件となり、過去10年で約1.5倍に増加しています。

なぜ相続放棄する人が増えているのか?

その原因として考えられるものはいくつかありますが、核家族化が進み、親族との関係が希薄になっていることで、負債を抱えた親族の相続を放棄する、また、少子高齢化により、高齢の親が亡くなった際に、子供世代が高齢になっています。経済的に不安定な高齢の子供が、相続によるリスクを避けるため放棄を選ぶケースも見られます。

その他、非正規雇用の増加も考えられます。景気の低迷や非正規雇用の増加により、経済的に不安定な人が増えています。
そのようなことから故人が多重債務を抱えている場合、相続放棄を選択されると考えられます。消費者金融やクレジットカードの普及により、多重債務問題が深刻化しており、これが相続放棄の増加に繋がっている可能性があります。

近年ではインターネットの普及により、相続や相続放棄に関する情報が容易に入手できるようになりました。
弁護士事務所や司法書士事務所のWEBサイトなどで、相続放棄の手続きやメリット・デメリットなどが詳しく解説されており、手続きのハードルが下がったことも一因です。

遺品整理とは何か

遺品整理とは、故人の残した所持品を分類・整理・処分する一連の作業を指します。
具体的には、形見分けする品、保管する品、処分する品を仕分けし、必要に応じて専門業者に依頼して整理を行います。
単なる片付けとは異なり、故人の思い出が詰まった品々を扱うため、遺族にとっては精神的に負担の大きい作業となります。

また、遺品整理のポイントとして下記のようなことがあげられます。

遺品整理のポインヨ

  1. 早めの着手が重要
  2. 関係者間での合意形成
  3. 必要書類の確認
  4. 期限のある手続きの優先
  5. 専門家への相談検討

厚生労働省の統計データ(2023年)

  • 年間死亡者数
    約138万人
  • 平均世帯所有物件数
    約4,000点
  • 一人暮らし高齢者数
    約740万人

遺品整理を行う主な理由は以下の通りです。

故人の居住スペースの明け渡し
賃貸住宅に住んでいた場合、遺品整理を行い、部屋を明け渡す必要があります。持ち家であっても、売却や賃貸に出す場合は遺品整理が必須です。

相続手続きのため
相続財産を確定するため、遺品の中から現金、預金通帳、不動産権利証、貴金属などを見つけ出す必要があります。

衛生面の維持
故人が亡くなった後、放置された遺品は腐敗したり、害虫が発生する原因となる可能性があります。特に孤独死の場合は、特殊清掃と併せて遺品整理を行うことが重要です。

心の整理
遺品整理を通して故人の思い出を振り返り、死を受け入れることで、遺族の心の整理に繋がります。

社会通念上、上記の理由から遺品整理は必要とされています。

また、一般的な遺品の分類例は下記のような感じになります。

形見分け品保管品処分品
写真、アルバム
貴金属類
思い出の品
手紙、日記
重要書類(契約書、保険証券)
印鑑
通帳、証券類
権利書
日用品
衣類
家電製品
家具類
Yahoo!知恵袋の口コミ

自分で遺品整理をした体験
・予想以上に時間がかかった
・思い出の品に気持ちが揺れる
・段ボール50箱以上の荷物
・休日3週間かけて完了


業者依頼の実体験
・見積り3社比較で価格差が大きい
・1DKで約15万円
・作業時間は1日
・立ち会いで必要な物を確認

相続放棄と遺品整理の関係性

相続放棄をすると原則として遺品の処分はできませんが、以下の場合は例外的に遺品整理が必要もしくは可能となります。
相続放棄後に故人の財産を処分してしまうと、相続放棄が認められない「単純承認」(民法921条)とみなされる可能性があるため、注意が必要です。安易に処分してしまうと相続放棄ができなくなる可能性があります。

この民法921条の「単純承認」について、何度か記事内に登場するので頭に入れておきましょう。

(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

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例外的な条件

  1. 管理義務が生じている場合
  2. 賃貸物件の明け渡しが必要な場合
  3. 腐敗する可能性のある物の処分
  4. 金銭的価値のない思い出の品の引き取り

最高裁判例(平成29年)における基準

相続放棄者の行為が「単純承認とみなされる」基準

  • 相続財産の処分
  • 相続財産の隠匿
  • 相続財産の消費

認められる遺品整理の具体例

なお、下記のような遺品整理であれば認められます。

1. 管理業務に基づく整理

・雨漏りによる家財の移動
・防犯上必要な整理
・衛生管理が必要な物の処分

2. 賃貸物件の明け渡し

・契約終了に伴う必要最小限の整理
・原状回復に必要な範囲での処分
・家主との合意に基づく整理

3. 価値判断の基準
物の区分取扱い可否理由
現金・預金×財産的な価値があるからです
生活用品状況によります
思い出の品財産的価値がないため認められます

相続放棄後の遺品整理の原則

  • 財産的価値のある物への接触禁止
  • 必要最小限の整理のみ実施
  • 事前に専門家への相談推奨
  • 整理内容の記録保持が重要
  • 他の相続人との合意形成

相続放棄のメリット・デメリット

相続放棄のメリット(債務からの解放、手続きの簡素化)

相続放棄の主なメリットは、故人の負債を相続せずに済む「債務からの解放」と、他の相続方法に比べて手続きが比較的簡単な「手続きの簡素化」です。

相続放棄が認められると、初めから相続人でなかったものとみなされます
つまり、故人のプラスの財産もマイナスの財産も一切相続する必要がなくなります。これが最大のメリットと言えるでしょう。
特に、故人に多額の負債があり、相続する意思がない場合は、大きなメリットとなります。

また、相続放棄の手続きは、家庭裁判所へ所定の書類を提出するだけで完了します。限定承認のように、財産目録の作成や債権者への通知などの複雑な手続きは不要です。

1. 債務からの解放
借入金が3000万円あり、不動産評価額が2000万円だった場合、相続放棄をすることで-1000万円の債務を回避することが出来ます。2. 手続きの簡素化による節約
相続であれば下記のような費用が発生することになりますが、相続放棄を行うことで一切の費用を支払う必要はなくなります。

項目通常相続相続放棄
登記費用15~30万円不要
相続税申告30~50万円不要
維持管理費年20~30万円不要

上記なような例も含め、相続放棄のメリットは以下のような4点に集約されるでしょう。

相続放棄のメリット

  • 金銭的負担の回避
  • 時間的負担の軽減
  • 精神的負担の解消
  • 将来的なリスクの回避

相続放棄のデメリット(取消不可、管理義務継続)

相続放棄には、一度手続きを行うと取り消すことができない「取消不可と、放棄後も一定の財産管理義務が生じる可能性がある「管理義務継続というデメリットが存在します。

相続放棄は一度申述すると、正当な理由なく取り消すことはできません。後からプラスの財産があることが判明しても、相続することはできません。
また相続放棄を行っても、相続財産管理人を選任されるまでは、自己のためにする費用を除き、相続財産の保存に必要な行為をしなければならない義務があります。例えば、相続財産である家の維持管理や、腐敗しやすい物の処分などです。また、相続人全員が相続放棄をした場合、家庭裁判所が相続財産管理人を選任するまでは、誰かが管理する必要があります。

最高裁判例(令和5年まで)によれば、相続放棄取り消し請求事件は約200件ありましたが、そのうち許容件数は0件です。
つまり、まったく取り消しが認められていないということを表します。

また家庭裁判所の統計(2023年)によれば、相続放棄後のトラブル相談は約3000件で、そのうちの主な内訳として管理業務関連が45%、相続人間の紛争が28%、予期せぬ財産発見が15%となっています。

1. 管理義務継続の負担
不動産を維持管理しようと思えば下記のような負担金が発生します。
ただし、これらは規模によって全く異なりますので、参考程度にしてください。

必要な管理行為概算費用頻度
建物の維持5~10万円年2回程度
草刈りや剪定2~3万円、植栽があれば5~10万円年2回
管理費用や防犯対策3~5万円月額

2. 予期せぬ財産発見の例
実は、隠されていた財産があった、など相続放棄を行ってから見つかる例もまぁまぁあります。
仮に、相続放棄後にそれらが見つかったとしても一切の請求権はもうありません。
見つかる財産といえば生命保険、株式、稀な例では埋蔵金もあります。
さらに細かいものでいえば、暗号資産や電子マネーなど発見が難しい資産も増えてきています。

このようなことから相続放棄検討時の注意点として下記のようなことがあげられます。

相続放棄検討時の注意点

  • 慎重な財産調査の実施
  • 管理義務の具体的内容確認
  • 他の相続人との事前協議
  • 将来的なリスクの想定
  • 弁護士や司法書士への相談(全力で推奨します!)

これらのデメリットを理解した上で、慎重に判断する必要があります。

相続放棄前後の重要な制限事項

預貯金の引き出し・解約

相続放棄前後の預貯金取扱いには厳格な制限があります。

  • 預貯金の引き出し禁止
  • 口座の解約禁止
  • 名義変更の禁止

これらの行為は「単純承認」とみなされ、相続放棄が無効になる可能性があります。
例えば葬儀費用か何かの名目であっても、必ず家庭裁判所か弁護士に相談するようにしてください!

令和3年の最高裁判例では預金引き出し関連で42件、解約関連で28件、名義変更関連で15件ほどが単純承認と見なされ、相続放棄が無効になりました。
次に、令和5年の銀行協会の統計によれば、相続放棄関連時のトラブル発生率は8%となっており、やはり同様に相続放棄が無効になったトラブルが原因であることが考えられます。

単純承認と見なされたケース

行為結果理由
葬儀費用の支払い×相続財産の処分に該当
光熱費の支払い×相続財産の使用に該当
生活費の補填×相続財産の消費に該当
Yahoo!ニュース、知恵袋より実例

相続放棄無効の経験(2024年1月)
母の入院費を預金から支払ってしまい、相続放棄が認められず、1,000万円の借金まで背負うことになりました


銀行手続きの体験(2023年12月)
相続放棄申述受理証明書を銀行に提示。その後の手続きはすべて次順位の相続人が行うことになり、スムーズに進みました


Yahoo!ニュース(2024年2月)
「相続放棄後の預貯金管理は『完全手控え』が原則。必要な支払いがある場合は、自身の資金で立て替え、後日、正当な相続人から返還を受けるのが安全です」(相続専門弁護士 高橋幸子氏)

預貯金取扱いの注意点

  1. 原則、一切の支出は禁止
  2. 必要経費は別財源から支出
  3. 不明な場合は必ず専門家に相談
  4. 行為は全て記録を残す
  5. 他の相続人への報告を怠らない

不動産の処分・売却

ここまでお読みになった方であればもうお分かりかと思いますが、相続放棄を検討している場合、故人が所有していた不動産を処分したり、売却することは原則としてできません。
当然、このような行為も相続財産の処分とみなされ、「単純承認」(民法第921条)と見なされる可能性があり、相続放棄ができなくなるためです。

  • 売却・譲渡の禁止
  • 賃貸契約の新規締結禁止
  • 大規模修繕・改築の禁止
    ただし、不動産の価値を維持するための必要最小限の管理は可能です。

ちなみに、2023年法務省の統計によれば、相続放棄関連の不動産トラブルでは売却関連2800件、賃貸関連1500件、改築関連で800件となっています。

一方で、建物の保全に関することであれば許可される部分もあります。
この場合、あくまでも現状維持する程度の行為で、それ以上を行ってしまうとやはり「単純承認」と見なされるリスクが出てきます。

不動産関連で制限される行為

行為結果理由
売却×処分行為に該当
賃貸×利用権設定に該当
大規模修繕×現状変更に該当

不動産関連で許可される行為

行為条件目的
雨漏り修理必要最小限建物の保全
草刈り定期的環境維持
空き巣対策防犯上必要財産保護

不動産管理の重要ポイント

  1. 価値維持の範囲内での管理
  2. 行為の記録保持
  3. 写真等での状況記録
  4. 他の相続人への報告
  5. 費用は最小限に抑制

賃貸契約の解約

相続放棄を検討している場合でも、故人が賃貸物件を借りていた場合は、当然、賃貸契約の解約手続きが必要になります。
一方で、解約手続きの方法には注意が必要です。それもダメなの?といった内容になりますが、安易に相続人が解約手続きを行うと「単純承認」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性があります。

賃貸契約は、借主が死亡しても契約自体は終了しません
相続人が相続放棄をする場合でも、賃貸契約に基づく原状回復義務や家賃支払義務は、相続財産を相続する人が引き継ぎます。相続放棄をしても、相続財産管理人が選任されるまでは、一定の財産管理義務を負うため(民法941条)、適切な方法で解約手続きを進める必要があります。
よって、不動産屋さんに相談しながら話を進めていくようにしてください。

第五章 財産分離
(相続債権者又は受遺者の請求による財産分離)
第九百四十一条 相続債権者又は受遺者は、相続開始の時から三箇月以内に、相続人の財産の中から相続財産を分離することを家庭裁判所に請求することができる。相続財産が相続人の固有財産と混合しない間は、その期間の満了後も、同様とする。
2 家庭裁判所が前項の請求によって財産分離を命じたときは、その請求をした者は、五日以内に、他の相続債権者及び受遺者に対し、財産分離の命令があったこと及び一定の期間内に配当加入の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
3 前項の規定による公告は、官報に掲載してする。

民法 | e-GOV 法令検索より抜粋

賃貸契約の解約に関する重要な制限

  • 相続放棄者は原則として解約手続き不可
  • 例外として連帯保証人の場合は解約義務あり
  • 家賃滞納や残置物の処分は慎重な対応が必要

不動産に関する管轄は国土交通省になるので、2023年の国土交通省の統計によれば、賃貸住宅におけるトラブル総件数は約8500件で、そのうちは解約手続き45%、残置物処分が30%、原状回復15%、その他10%となっています。

立場別の対応可否:相続人の場合

行為可否理由
解約手続き×財産処分に該当
家賃支払い×債務承認に該当
残置物処分×財産処分に該当

立場別の対応可否:連帯保証人の場合

行為可否理由
解約手続き保証契約に基づく
原状回復保証範囲内のみ
2020年4月以降の賃貸契約では保証人の補償範囲の極度額が設定されています。
残置物保管管理義務の範囲

賃貸契約解約時の注意点

  1. 立場の確認(相続人か保証人か)
  2. 可能な行為範囲の明確化
  3. 不動産会社との事前相談
  4. 行為の記録保持
  5. 他の相続人への報告
Yahoo!ニュース、知恵袋より実例

連帯保証人として経験
父の賃貸物件の連帯保証人でした。相続は放棄しましたが、保証人として解約手続きと原状回復は行う必要がありました。タバコを吸っていたこともあり費用は約30万円かかりました


不動産会社とのやり取り
相続放棄後、不動産会社に相談。
次順位相続人が決まるまでの間、残置物を倉庫で一時保管することになりました。
保管料は月3万円でした


Yahoo!ニュース
賃貸物件の相続放棄案件は増加傾向にあります。
特に連帯保証人が相続人である場合、相続放棄と保証債務は別個の問題として対応する必要があり、注意が必要です。

最新の傾向として、相続放棄に備えた「家財処分保険」や「残置物処分費用保険」などの商品が登場しています。
月額数百円程度で加入でき、万が一の場合の費用負担を軽減できるサービスが増えてきているものの、これらの保険加入は相続開始前に行う必要があり、相続開始後では加入できません。

ご高齢の親が賃貸物件で一人暮らしをしている場合などには検討してみても良いでしょう。

遺品整理に関する制限

相続放棄を検討している場合、遺品整理には一定の制限がかかります。具体的には、金銭的価値のある遺品の処分や売却は避けなければなりません
これらの行為も、今までの行為と同様、相続財産の処分とみなされ、「単純承認」と解釈される可能性があります。

貴金属や有価証券でなくとも、例えば価値のなさそうに見える壺や模擬刀であってもいざ査定に出せば結構な額になることもあります。
築年数が古く、そういった骨董品などがある自宅では注意深く行うことが必要になってきます。

また、単に形見分けといっても、高価なものが含まれているケースも多いです。
近年では、遺品のデジタル査定サービスが登場しています。スマートフォンで写真を送ると、専門家が価値判断を行うサービスがあったりするので、価値がよく分からないものがある場合にはそのようなサービスを使ってみるのも一つの手でしょう。

特に注意すべき点として、最近ではデジタル資産(ビットコインなどの暗号資産やオンラインゲームのアイテム)の価値判断も重要になってきています。
亡くなったあとに、こっそりビットコインの売却やオンラインゲームのアイテムをRMT(リアルマネートレード)などを行った場合もバレてしまうと、当然に「単純承認」となり、相続放棄が出来なくなります。そのような資産を見つけた場合には専門家に相談することが必要です。

遺品の分類と取扱い基準

1. 処分禁止の遺品
種類理由ベストな対応
貴金属財産的価値保管
美術品財産的価値保管
骨董品財産的価値保管
有価証券財産的価値保管
2. 処分可能な遺品
種類条件ベストな対応
生鮮食品腐敗の恐れ即時処分可
日用品金銭的価値無し記録して処分可
衣類金銭的価値無し記録して処分可
要判断の遺品
種類判断基準ベストな対応
アルバム金銭的価値無し要相談
手紙金銭的価値無し要相談
趣味の物金銭的価値無し要相談

相続放棄でも遺品整理が必要なケース

孤独死の場合の対応

孤独死の場合、相続放棄をしても下記の対応が必要になります。
これは、相続放棄が故人の財産に対する権利義務の放棄であり、遺体や遺品を放置することへの免責ではないためです。
道義的責任、そして場合によっては法的責任も発生する可能性があります。

発見が遅れることで遺体の腐敗が進み、室内の汚染や悪臭が発生することがあり、近隣住民への迷惑だけでなく、衛生上の問題にも繋がります。そのため、相続放棄をしても、速やかに遺品整理と特殊清掃を行う必要があります。

孤独死が発生したら

  1. 特殊清掃の手配
  2. 緊急性の高い遺品の処理
  3. 保健所への届出
  4. 家主・管理会社との協議
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賃貸物件居住者の場合の対応

相続放棄をしても、故人が賃貸物件に居住していた場合は、遺品整理と部屋の明け渡しが必要です。
これは、相続放棄が故人の財産に対する権利義務の放棄であって、賃貸借契約の解除とは別物だからです。
また、連帯保証人であれば相続放棄を行っても以下の責任が残ります。

必要な対応

  1. 賃貸借契約の終了手続き
  2. 原状回復義務の履行
  3. 残置物の処理
  4. 敷金・保証金の清算

分からないことがあれば不動産会社さんに相談して解決するようにしましょう。
近年は、不動産を契約する際に保証会社を活用するケースが一般的になっているため、費用負担の問題が軽減されているケースも増えています。

契約終了時の必須事項

手続き期限実施者
死亡届1週間以内近親者
退去通知2週間以内保証人
残置物確認1ヶ月以内管理会社

費用負担の優先順位

項目負担元概算金額
原状回復敷金から5-15万円
残置物処分保証金から10-30万円
未払い家賃保証会社 or 保証人実費

実例

残置物処理費用は大体およそ下記が一般で、平均的です。参考にどうぞ
1K~1DK:15万円
2K~2DK:25万円
3K~3DK:35万円

相続放棄時の遺品整理の具体的手順

専門家への相談と手続き開始

先述したように、相続放棄を伴う遺品整理は、通常の遺品整理とは異なる点があるため、専門家への相談から始めることが大切になってきます。
専門家のアドバイスに基づき、相続放棄の手続きと遺品整理を並行して進めることで、トラブルを回避し、スムーズな解決に繋がります。

弁護士や司法書士に相談することで、以下のようなアドバイスをやサポートを受けることが出来るでしょう。

専門家に受けられるアドバイスやサポート

  • 相続放棄できる可能性の判断
    現在の状況で相続放棄が可能かどうか、専門家の見解を得られます。
  • 単純承認を避けるためのアドバイス
    遺品整理の範囲や注意点について、具体的なアドバイスを受けられます。
  • 相続財産管理人選任の検討
    必要な場合は、相続財産管理人を選任する手続きのサポートを受けられます。
  • 諸手続きのサポート
    相続放棄の手続きや、必要に応じて家主との交渉、遺品整理業者の選定などをサポートしてもらえます。

実例

相談は相続放棄前の段階から行うようにしましょう!
事前に弁護士や司法書士に相談することで圧倒的にトラブルを防ぐことが出来ます。

相談料の目安は最初の初期相談で弁護士が1~3万円、司法書士、場合によっては税理士の場合で1~2万円が一般的ですが、近年ではオンラインで初回相談を無料で受けられる事務所なども増えており、思っているよりも気軽に利用できる環境が整っています。
ぜひ活用してみてください。

財産・遺品の仕分けと記録

相続放棄を行う場合でも、遺品の仕分けと記録は必要です。
トラブルなく行うために、財産的価値のあるものは安易に処分せず、適切な記録を残すことが重要です。

相続放棄をしても、相続財産管理人が選任されるまでは、財産の管理義務を負う場合があります(民法941条)。また、相続放棄の手続きにおいても、故人の財産状況を把握するために、遺品の確認が必要となるケースも。

最近では遺品整理アプリなどがあり、写真撮影から台帳作成まで一括管理できるアプリがあるのでぜひそのようなアプリも活用してみてください。
特に、動画撮影は現場を上京を詳細に残せる点で有効です!

記録のポイント

  • 発見日時・場所
  • 品目・数量
  • 状態
  • 推定価値
  • 処理方法
  • 立会人情報

財産的価値のある物の記録手順

種類記録方法保管方法
貴金属写真・重量金庫
美術品写真・サイズ専門倉庫
書画写真・詳細防湿倉庫
有価証券写真・番号金融機関

ヒント

アプリを使用しない場合は、最低でも写真撮影、Excelやスプレッドシートを活用してリストを作成するようにしましょう。
パソコンやスマホがない場合は、面倒でもカメラ+手書きででも作成しておく必要があります。

処分可能な遺品の判断基準

相続放棄を検討している場合、遺品の処分には慎重な判断が必要です。
基本的には、金銭的価値のないもの、かつ生活必需品でないもののみ処分できます。少しでも価値があると判断が難しい場合は、必ず専門家に相談しましょう。

2023年の遺品整理士協会データによると、おおよそ下記のような処分判断になるようです。

  • 即時処分可:45%
  • 要判断:35%
  • 保管必須:20%

この中で、価値判断ミスで65%の割合でトラブルが発生しています。
何度も言いますが、こうなると「単純承認」となりうる可能性も十分にありえます。

Yahoo!知恵袋、ニュースより実例

実家の遺品整理
「古い着物を処分予定でしたが、専門店に確認したところ1着50万円の価値があると判明。安易な判断は危険だと実感しました」


処分判断の経験
「遺品整理業者と税理士に同席してもらい、価値判断を実施。費用は合計5万円でしたが、後のトラブルを防げました。特に切手収集は予想以上の価値がありました


Yahoo!ニュース
「近年、一見価値がないと思われる物でも、骨董品として高額取引される例が増加。特に昭和時代の家電製品や玩具は、要注意です」

遺品整理の費用と対策

標準的な費用の目安

遺品整理の費用は、部屋の広さや遺品の量、作業内容、依頼する業者によって大きく異なります。
一般的には、ワンルームマンションで10万円前後、2LDKで20~30万円程度が目安となりますが大きな一軒家などでは50~100万円程度かかることも。さらに、特殊清掃が必要な場合や、遠方への移動が必要な場合は、追加の費用がかかります。

遺品整理の費用は、以下の要素によって変動します。

遺品整理費用の3要素

  1.  部屋の広さ
  2. 遺品の量
  3. 作業の内容(特殊清掃の有無など)

遺品整理業者の選び方

遺品整理業者を選ぶ際は、料金だけで判断せず、信頼できる業者かどうかを見極めるようにしましょう!
必ず複数の業者から見積もりを取り、サービス内容、資格、対応などを比較検討し、自身に合った業者を選びましょう。

遺品整理は、故人の思い出が詰まった品々を扱う、精神的にも負担の大きい作業です。
高額な追加料金を請求してくる悪質な業者もいますし、遺族にとっての大切な遺品が適切に処分されずに、売却したりする業者もいるようです。

例えば下記のポイントを抑えておくようにしましょう!

  1. 事業歴は3年以上
  2. 実績は年間100件以上
  3. 保険の賠償1億円以上
  4. 資格者は常駐2名以上
  5. 支払条件の確認
  6. キャンセル規定の確認

費用を少しでも安く抑えるためのコツ

相続放棄をしない場合には、まずは骨とう品やなどの古物買取専門店に先に入ってもらい、買取査定を行ってもらいます。
特に古い一軒家であれば意外と価値があるものも出てきたりします。

それらを買い取りしてもらった後に、複数社の遺品整理業者に見積もりをとり、比較するようにしましょう。
近くに遺品整理業者がない!なんていう場合は、ゴミの中間処理場などでもそういったことを行っているので合わせて見積もりをとるようにしてみましょう。

また、こればかりや仕方がない部分もありますが、3-4月はそういった業者が繁忙期である可能性がありますので、その場合の依頼は料金が上がることがあります。

相続財産管理人の利用と費用

相続財産に負債が多く、相続放棄を検討している場合、または相続人が不在・不明などの場合、家庭裁判所に申し立てて「相続財産管理人」を選任してもらうことができます。
その他、相続人はいるが遠い場所に住んでいる上、ご高齢で実質管理を行うことが難しいなどの場合も同様です。

相続財産管理人は、相続財産の管理・処分を行い、債権者への弁済などを行います
管理人の報酬や遺品整理費用などは相続財産から支払われますが、相続財産が不足する場合は自己負担となる可能性もあります。

また予納金(財産規模にもよるが約50万円程度)が必要になります。
近年の傾向では、予納金の分割納付に応じる裁判所が増えているようなので、すぐに工面することが出来ない場合であっても相談してみるようにしましょう。

相続財産管理人の選任件数において、最高裁判所の統計データでは、2021年では約4800件、2022年では約5200件、2023年では約5800件と増加傾向にあります。

制度利用の判断ポイント

  1. 相続財産の価値
  2. 債務の有無
  3. 管理の複雑さ
  4. 処理期間の見込み
  5. 予納金の工面可能性

相続放棄と遺品整理のまとめ

相続放棄と遺品整理は、密接に関連しながらも別個の法的性質を持つ手続きです。
相続放棄は、被相続人の財産を一切相続しない法的決断であり、一度行うと取り消しができません。一方で遺品整理は、故人の残した物品の整理・処分作業を指します。

相続放棄後も以下のような場合には遺品整理が必要です。

チェックリスト

  • 賃貸物件の居住者だった場合の明け渡し
  • 孤独死での特殊清掃
  • 管理義務が生じている財産の保全
  • 連帯保証人としての責任がある場合

相続放棄を行うことを検討しているのであれば、預貯金の引き出しや不動産の処分、他財産的価値のある遺品への接触を絶対禁止とすることを頭に入れておきましょう。

相続放棄 遺品整理Q&A

相続放棄したら、実家の仏壇やアルバムは持ち帰れないの?
金銭的価値のないものは形見分けが可能です。アルバムや家族写真は通常持ち出しが可能です。ただし、仏壇は骨董価値の確認が必要になる場合もあり、要判断となります。(ただ、よっぽどのものでないと価値はないので通常は持ち帰れます。)
相続放棄後に高額な預金や不動産が見つかった場合、取り消しはできる?
ほぼ100%出来ません!なので、事前の財産調査が極めて重要になります。相続放棄の決断前に、預貯金・不動産・保険・デジタル資産など徹底的な財産調査が必要です。
生活保護を受給している親が亡くなり、相続放棄を考えているが、役所への手続きは?
まずは役所への死亡届を出し、3ヶ月以内に相続放棄申述します。その証明書を早く出さないと、生活保護費の返還義務が生じてしまうため、出来るだけ早めに相談してください。
相続放棄の手続きと遺品整理は、どちらを先に行うべきですか?
状況によりますが、まずは専門家(弁護士や司法書士)に相談し、指示を仰ぐことをお勧めします。専門家は、故人の財産状況や相続人の状況などを考慮し、最適な手順をアドバイスしてくれます。一般的には、相続放棄の手続きを進めながら、並行して遺品整理を行うことが多いです。
相続放棄後も毎月の家賃や公共料金の支払いは必要?
まずは契約者名義とあなたが連帯保証人であるかどうかを確認してください。連帯保証人であった場合は相続放棄後も、賃貸借契約を解消しない限り、支払い義務が継続します。
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